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せいとしとのきろく
生と死との記録
豊島 与志雄
「帝国文学」1918(大正7)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,961 字 · 39 页
私の祖父もそうであった。祖父には数人の児があったが、その後を継いだ私の父は、やはり祖父の子ではなかった。事情あって祖母の腹に出来た子だった。それを私の母は心配して居た。そして堯が長く病気で居ることをひどく気にして、かねて信心の鬼子母神様にお詣りをするように私にくれぐれも云って来た。それで芳子は堯をつれて雑司ヶ谷の鬼子母神にお詣りをした。小さな草履を貰って来た。向う二年間鬼子母神の御側に奉仕する児となったのである。毎月一回参詣をしなければならなかった。
私はその小さな草履を見ていると、涙ぐましい感情をそそられた。二階から下りて来てまた蒲団の中にはいった。「今年は本命だから何をしても悪い。ただじっと動かないでいなければならない。」夏に国に帰った時母から云われた言葉が思い出せた。
目に見えない種々な超自然的な悪いことが私のまわりに立ち罩めた。「俺は凡てを征服してみせる。」と私は自分に云った。然し人が云うように、幾重にも重った私の厄を堯がもし荷っているとしたら……。「自分の力で堯を保護してみせる。堯は自分のものだ!」そう云ったが、私の心は妙に慴えていた。