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せいとしとのきろく

生と死との記録

豊島 与志雄

「帝国文学」1918(大正7)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,961 字 · 39 页

青空文庫

私は外に出た。空には薄い雲が流れていた。日の光りが時々陰った。

堯と生れた児とが一つになって私の上に被さった。一は死であり、一は生であった。二つ共愛だった。その両面がぐるぐる廻転した。私は眼が廻りそうになった。と、突然その二つが遠い所へ飛び去ってしまった。私は妙に訳の分らぬ自分自身を見た。そしてその時、堯の姿が、万灯を持って飛びはねてる堯の姿が、はっきり私の頭に映じた。「よくなる、よくなる。」そう私は心に叫んだ。「なにじっと堪えてみせる。」そうも叫んだ。

病院の近くで、私の家の方へやって来るA氏に出逢った。私はただ頭を下げた。病院の入口でT氏に出逢った。T氏はその強度の近眼鏡の下から私に挨拶をした。

「今すぐ私も診察に参ります。」

私は力強くなった。

病室にはいると、堯はやはり静に寝ていた。手首を取ると脈が殆んど指先に感じなかった。ふっ……ふっと喘ぐような急速な呼吸をしていた。

私はじっと唇をかみしめて眼を閉じた。

十二時すぎに医員と女医とが見舞って来た。

「仕方がありませんね。」と医員は云った。「手首には殆んど脈搏を感じないのですから。」

カンフル注射が胸に行われた。