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せいかつしゃとしてのせいちょう
生活者としての成長
宮本 百合子
二葉亭四迷の悲劇にもふれて
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,603 字 · 12 页
歴史に働きかける力としての存在ということも、いつも立役者として舞台の真中に華々しく登場しているということとまるでちがう。
科学者が真に科学者であるためには沈着な勇気と歴史への洞察と人間は結局合理的な生きものであるということへの信頼とを、つよく胸底に蔵さなくてはならない時代がある。科学の世界にだって、流行というものはある。それが近代の宣伝術というものときりはなされない時代性格である。昔錬金術というものがあって今日の人の目はそれが科学でなかったことを知っているのであるが、それなら何人の努力の成果に立って、きょうの科学は錬金術の非科学性を明らかにして来たのであったろう。決して決して錬金術師達の口伝からではなかった。錬金術が背後の楯としていた中世の宗教の暗い恐怖すべき力と向いあって、しばしばその恐怖に圧倒されそうになる自分ともたたかいながら、錬金術への疑問を、現実があらわす客観的な真理にしたがって謙遜に解きにかかって、おそらくは目立たぬ生涯を硫黄くさい幼稚な設備の実験室で費した無名の何人かの人々の業績の永年のつみ積りを、忘却することは出来ないのである。
美しさはそのようなところにもある。