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しょうがいのかきね
生涯の垣根
室生 犀星
「新潮」1953(昭和28)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,267 字 · 22 页
落着きはらったものが、どうやら庭をかたちづけて来た。この間じゅう、民さんは怠けて朝は遅く、どうかすると迎えにやっても、昼頃にならなければ出て来なかった。彼は庭じゅうをうろうろして民さんを待ち、何度も使を出し、表にかれのやってくる方向をながめに出た。どの道路からも、植木屋はやって来ないで、彼のむかっ腹は我慢のならないものになった。部屋に上って仕事をしようとしても、そんな落ちつきを失った彼には、書くべきことがらが怒っているために、片っ端から逃げを打っていた。
庭はまだ出来上っていない、あせればあせるほど、この植木屋さんの朝出の時間が遅れ、彼自身が迎えにゆくと、やっと起きて出て来て、済みませんというだけであった。その顔色にゆうべの酒気がのこり、寝てから何時間も経っていないしぶしぶした、そんな睡眠不足の眼附だった。こういう幾日かを過してから、彼はこの男と納得ずくでわかれたのである。後でかれの内儀さんが、浅草のどこかに勤めていることを聞いたが、その勤め先に仕事仕舞から晩に出掛けていたらしく、ごたごたがあって相当永い間民さんは夜も睡れないことがあるらしかった。