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しょうがいのかきね
生涯の垣根
室生 犀星
「新潮」1953(昭和28)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,267 字 · 22 页
の批評はしなかった。
何か民さんにさせる仕事はないかと、彼は彼の庭をぐるぐる見廻したが、植木も石も入れる余地もなく、職人をつかって重い石の据附に監督をする気なぞ、もう頭のどこにもなかった。かれに与える仕事はまずない。仕事はすくなくとも纏った金のしごとでなければ、せっかく出してやっても何にもならない訳だ、そんな金のかかる仕事は彼の庭では何一つなかった。庭はそのままで完成され、どう動かしようもないのだ、樹木は枯れて行っても、それはそのまま庭の景色には一向差支えのないような、他の景色の賑合いが補っていてくれていた。土を見たい彼には、全く土がしだいに広場をつくり、他の何物にも及びがたい重畳たるおもむきを加えていたから、樹木の枯れたのには、それに代るものを植え附けようとはしなかった。完成されたものはその内部でこわれていても、外がわの美しさがそれを保っていてくれたからである。
彼は三十年もかかって、やっと辿りついたような例の土と垣根だけを見る庭の談義を茶の間でひとくさりしゃべると、例によって庭をぐるぐる廻った。檻の中のくまみたいに彼は用があっても、なくても、庭をぐるぐる廻るくせなのである。