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しょうがいのかきね

生涯の垣根

室生 犀星

「新潮」1953(昭和28)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,267 字 · 22 页

青空文庫

竹はだんだん彼にうるさい思いをさせ、よわよわしい末流の風雅につき落されそうで、危なくてひやひやしてならなかった。飽きることもそうだが、土が見られないのと、土のうつくしさが荒されることもおもな原因だった。そこで彼の命令によって民さんは篠竹の株を起しはじめた。たいへんな数の篠竹は二十や三十の株ではなかった。藪畳を起す風塵と同様の捲き起しは、民さんの顔をまっ黒にさせ、株はまるでどうにも手のつけようのないほど山積されて行った。どこにも貰い手のない篠竹はとなりの寺の土手に植え、そして後の分は空地なぞに棄てることにした。牛車で搬んだものをもったいないにはもったいないが、取り棄てるより外に用いようはなかった。一本ものこさずに抜き取った庭は、がらんとして空あかりばかりが、あふれて飜った、民さんは言った。

「次に何を植えるんです。」

「次には、……」

彼はなぜか羞かしそうに、芭蕉をうえるのだといった。その理由はわからないがこの男の前で、いつもあらたに木を植えるときには、なぜか口ごもった遠慮がちな言い方をしていた。樹木のことでは何でも知っている男の前には、彼といえどもいくらかの羞恥の気ざしなしには、ものが言えなかった。