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たはらしのはんざい

田原氏の犯罪

豊島 与志雄

「黒潮」1917(大正6)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 57 页

青空文庫

真直な木が曲った木に対して自分と同じ様でないと云って腹を立てるのは愚かなことだ。腹を立てる方が悪いんだ。」

その三――

或る夏重夫は激しい胃腸加答児に罹った。

昼夜約十回に余る下痢を催し、三十九度内外の高熱が往来した。激しい渇に対して少量の飲料しか与えられなかった。医者は毎日便の検査をした。丁度赤痢流行の際だったので、医者はもしやと思ったのである。すぐに看護婦もつけられた。

田原さんはその中を毎日いつもの通り午前中だけ神保町の店に通った。午後彼は病人の枕辺に坐ってその顔を覗いた。夕方医者が来て診察する間、彼は次の室にじっと待っていた。そして医者から毎日殆んど同じ様な容態をきき取った。

家の中は凡ての人が静かに立ち働いていたが、静かなままに不安な空気がざわついていた。しげ子はやたらに気を苛立っていた。彼女はも一人医者を呼び迎えようと提議した。

「その方がよくはありませんでしょうか。」と彼女は夫に云った。

「そうだね、それもいいかも知れない。」

「それとも今少し様子を見てからにしましょうか。沢田さん(医者の名)も大丈夫だろうと云っていられますから。」

「そうだね。