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いなかいしのこ

田舎医師の子

相馬 泰三

「早稲田文学」1914(大正3)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,947 字 · 76 页

青空文庫

それを遠くから眺めると、秋の白い光を受けてそれが雲母のように光った。銀色に、淡紅色に、薄紫色にいろいろになって波うった。

十月のある晴れた朝、庸介は、すぐ家の前に近く見えているG山へ登ろうと思って家を出た。二里とは離れていなかった。それは、国境の山々がちょうどもう終ろうとして平原の中へ岬のように突き出している小山脈の一峰で、高さは云うほどの事もなかった。それに頂上まで大幅の立派な道がついていた。松や杉の林に富んだ、美しい愛らしい小山であった。その麓には温泉場などもあり、この地方の農民が春や秋の休み日に、よく三々五々打連れて蕨や栗を採りに登る山であった。

彼はただ何という事もなしに、高い処から遠く眺めてみたいというような願から、ふと思いたったのであった。前の△△川を舟で渡って向う岸につくと、堤防に添うて一つの郡道へと出た。それはそこからかのG山の麓を目がけてそこへ一直線に導いてゆくような道であった。道の右、左には田や畑が限りもなく続いていた。穀物はすでに熟りきって、今にも刈り取られるのを待っているように見えた。田では早稲は刈り終られ、今や中手の刈り入れで百姓は忙しそうに見えた。