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いなかいしのこ
田舎医師の子
相馬 泰三
「早稲田文学」1914(大正3)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,947 字 · 76 页
いろいろ薬も飲ませたが、何もかも一向にその効目がなかった。現実の物の形や、響きや、それ等が彼女には何の交渉もなかった。そして、絶えず何か恐ろしい幻影に追い責められてでもいるらしく、それから逃れでもするようにしきりと身体をもがいた。両手でしっかり顔を蔽い隠したり、また、時々訳のわからない事を云って悲鳴をあげた。静かな眠りは一時間と続くことがなかった。……身体は燃えるように熱かった。こんな事がちょうど三昼夜もつづいた。
めずらしく彼女は静かにすやすやと眠っていた。そしてその後に目を開いた時に、初めて再び彼女は幻影の世界から帰って来た。
房子は、そこに附き添っていてくれた兄の顔を懐しげにじっと見入った。そしてあどけない羞らいを帯びた微笑を口元に浮べて、
「兄さん!」と呼んだ。
庸介は、ほっと安心した喜ばしい顔を妹の顔の上へつき出して、
「おや、房子、お目覚めなのかい?」と云った。そしてその額のところを軽く撫でてやった。
「何だか、……わたし大変だったわね。」と、晴やかに云って、それから「いったい、どうしたんでしたの?」と憂わしげに附け加えた。
それにもかかわらず、兄は、