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いなかきょうし
田舎教師 他一編
田山 花袋
田山花袋『田舎教師 他一編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:田舎教師、『田舎教師』について。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,097 字 · 312 页
麦湯は氷のように冷えていた。郁治も清三も二三杯お代わりをして飲んだ。美穂子は兄のそばにすわって、遠慮なしにいろいろな話をした。
「寄宿生活はずいぶんたいへんでしょう」
清三はこうきくと、
「えゝえゝ、ずいぶんにぎやかですよ。ほかの女学校などと違って、監督がむずかしいのですけど、それでもやっぱり……」
「女学校の寄宿舎なんて、それはたいへんなものさ。話で聞いてもずいぶん愛想がつきるよ」と北川は笑って、「やっぱり、男の寄宿とそうたいして違いはないんだね」
「まさか兄さん」
と美穂子は笑った。
その室には西日がさした。松の影が庭から縁側に移った。垣の外を荷車の通る音がする。
この春と同じように、二人の友だちは家への帰途を黙って歩いた。言いたいことは郁治の胸にも清三の胸にも山ほどある。しかし二人ともそれに触れようとしなかった。城址の錆びた沼に赤い夕日がさして、ヤンマが蘆の梢に一疋、二疋、三疋までとまっている。子児が長いもち竿を持って、田の中に腰までつかって、おつるみの蜻蛉をさしていた。
石橋近くに来た時、
「今年は夏休みをどうする……どこかへ行くかね?」
郁治は突然こうたずねた。