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いなかきょうし
田舎教師 他一編
田山 花袋
田山花袋『田舎教師 他一編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:田舎教師、『田舎教師』について。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,097 字 · 312 页
「石川はどうした?」
と、しばらくしてから、清三がきいた。
「つい、この間、東京から帰って来た」と郁治は言って、「あまり道楽をするものだから、家でも困って、今度足どめに、いよいよ嫁さんが来るそうだ」
「どこから?」
「なんでも川越の財産家で跡見女学校にいた女だそうだ。容色望みという条件でさがしたんだから、きっと別嬪さんに違いないよ」
「先生も変わったね?」
「ほんとうに変わった。雑誌をやってる時分とはまるで違う」
それから同窓の友だちの話がいろいろ出た。窓からは涼しい風がはいる……。
翌朝、郁治が眼をさましたころには、清三は階下で父親を手伝って勝手もとをしていた。いまさらながら、友の衰弱したのを郁治は見た。小畑に聞いたが、これほどとは思わなかった。朝の膳には味噌汁に鶏卵が落としてあった。清三は牛乳一合にパンを少し食った。二人は二階にまたすわってみたが、もうこれといって話もなかった。
郁治が帰る時に、
「それじゃ学校の話、一つ運動してみてくれたまえ」
清三はくり返して頼んだ。
母親の病気ははかばかしくなかった。三度々々食物も満足に咽喉に通らなかった。父親が商売に出たあとでは、清三がお粥をこしらえたり、好きなものを通りに出て買って来てやったりする。