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いなかふうなヒューモレスク

田舎風なヒューモレスク

宮本 百合子

「写真報知」1925(大正14)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,790 字 · 16 页

青空文庫

あたりはしんとした夕暮の畑だから、音はすんで響き渡る。するとかなたの花畑の裏の障子がさらりと明く。もうぼんやりした薄明で内の人の姿は見わけられないが、確に人がい、開けた障子の窓からこっちに向って、今度は手ばたきで答える。

「わかりました、じき上ります」

という暗号なのだ。それをきくと私は安心して茶の間に戻って来る。そして、小さな女中にいいつける。

「じゃあ、もう一人前お茶わんがいるよ」

私の熱心な拍子木に迎えられ、遠い家から晩さんに来るのは、たれだろう? 親切な読者たちは、それがまあひどく馬鹿でもなく、見っともなくもない一人の青年か、壮年か、兎に角マスキュリン・ジェンダで話さるべき客と想像されはしまいか? それは幾分ロマンティックだ。まして、彼が私の崇拝者ででもあるというなら。あの辺の自然はおう揚で規模の壮大な野放しの美に充ちているから、その位のありふれたロマンスでもきっとそうこせこせ極りわるい思いをさせずに存在させたでしょう。しかし、何という私はおばあさんに縁の深い人間だろう、私の拍子木に答えて来るのは、おばあさんだ。しかも八十二になる。――

夕方、私は八十四で少しぼけ始めた祖母と、八十二で、貧しく村のうわさ話し伝達掛のそのばあさんと小娘と四人で晩飯をたべていた。