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だんじょこうさいよりかていせいかつへ

男女交際より家庭生活へ

宮本 百合子

「女性日本人」1922(大正11)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,488 字 · 35 页

青空文庫

例えば、外国人の著書に屡々欧米の婦人運動、又は女性の社会に於ける位置の進化というものの研究材料として、東洋、多く支那、日本のそれを例に引く場合を考えて見ましょう。

彼等は、日本の婦人が全く奴隷的境遇に甘じ、良人は放蕩をしようが、自分を離婚で脅かそうが、只管犠牲の覚悟で仕えている。そして、自分の良人を呼ぶのにさえその名を云わず“Our master”と呼ぶ、と云ったと仮定します。

これを見た日本人は、恐らく、一言を付加せずにはいられない心持が致しましょう。

勿論、日本にもそんな無情な良人がないことはない。けれども、決して、一般の日本婦人の状態だとは云えない。寧ろ、そんなのは少数の例外で、多くは、良人は妻を扶け、妻は良人を扶けて相偕に生活している、と云いましょう。英語に直訳すれば、まるで何だかよそよそしい、卑屈な響になって仕舞うが、日本の女性が良人を、「宅の主人」と呼ぶのは、決して、奴僕が雇主を指して云うような感情を持ってはいない。丁度、英語を喋る国の女が、自分の良人を第三者に対して話す時には、ミスター・誰々と姓を呼ぶ、それと共通な心理なのだと抗議を申し込むでしょう。