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だんじょどうけん

男女同権

太宰 治

「改造」1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,735 字 · 32 页

青空文庫

とうとうこの女は、私と同棲三年目に、私を捨てて逃げて行きました。へんな書き置きみたいなものを残して行きましたが、それがまた何とも不愉快、あなたはユダヤ人だったのですね、はじめてわかりました、虫にたとえると、赤蟻です、と書いてあるのです。何の事だか、まるでナンセンスのようでございますが、しかし、感覚的にぞっとするほどイヤな、まるで地獄の妖婆の呪文みたいな、まことに異様な気持のする言葉で、あんな脳の悪い女でも、こんな不愉快きわまる戦慄の言葉を案出し投げつけて寄こす事が出来るとは、実に女性というものには、底の知れないおそろしいところがあるとつくづく感じ入りましたのでございます。

けれどもそれは、まあ、文学少女の、文学的な悪態で、二番目の女房の現実的な悪辣さに較べると、まだしも我慢が出来ると言っていいかも知れませんでございます。この二番目の女房は、私が本郷に小さいミルクホールをひらいた時、給仕女として雇った女で、ミルクホールが失敗して閉鎖になってもそのままずるずると私のところに居ついてしまいまして、この女はまた金を欲しがる事、あたかも飢渇の狼の如く、私の詩の勉強などはてんで認めず、また私の詩の友人ひとりひとりに対する蔭口は猛烈をきわめ、まあ俗に言うしっかり者みたいな一面がありまして、私の詩の評判などはどうだって