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がぼう

画舫

豊島 与志雄

――近代伝説――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,863 字 · 22 页

青空文庫

そしてこの三月になって、張金田は商用を兼ねて別荘にやって来ました。蘇州の絹布と麻布とのすばらしい刺繍の土産物を、秀梅と瑞華とに持って来ました。これまでに嘗てないことでした。けれども、手紙の一件については、彼は一言も口に出しませんでした。秀梅の方もいい出しませんでした。そこにまた、いつどんなことになるか分らない不安がありました。

李景雲はいつも、画舫好きな張金田に贔屓になっておりましたし、今日のように張金田が湖上でお茶の集りをするような時には、彼一人が呼ばれるのでしたから、彼にもし陳秀梅一家に味方してくれる心があるなら、張金田の真意もそれとなく監視し、なお今後とも力になってほしいというのでありました。

そういうことを、知性のすぐれた景雲には納得出来るほどのいい廻しで簡単に、秀梅は話しました。そして溜息をつきました。

「女の気持が分るような人は、世の中にめったにありません。」

黙って聞いていた景雲は、急に叫びました。

「私を信じて下さいますか。」

「信じますからこそ、こういう話をしました。」

「私は、何でも致します。あなたのためなら、どんなことでも致します。