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たたまれたまち

畳まれた町

国枝 史郎

「サンデー毎日」1927(昭和2)年7月17日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,340 字 · 7 页

青空文庫

……で、空はよく晴れて、一切合財が田舎のようであった。

だが探偵を驚かせたのは、そういう田舎じみた風景ではなかった。では何が探偵を驚かせたか? 物の形が人間世界とは、すっかり変っていることであった。

「かえるが子供より大きいではないか。とんぼが兎より大きいではないか。鈴蘭が水車より高いではないか。あッ、そうして、あの虹は!」

虹がかかっているのであった。そうしてその虹は薔薇の蕾を、無闇と投げ下ろしているのであった。

「俺には一切が解らなくなった」

――で、探偵の心持が、たよりない以上にたよりなくなり、愁をさえも感じたのは、当然なことといわなければなるまい。

だがそういう探偵の心も、一ツの築山を向うへ巡り、芝生の上へ立った時、喜びのために膨れ上がった。

「被害者だけはやっと目っけた!」

一人の可哀そうな兵隊さんが、殺されて斃れていたからである。

「だが、加害者は何者だろう?」

呟いたが探偵は顫え上がった。

市街や露路や遊園地や、そういうものを縦断して、途方もなく大きな鉄砲が、横たえられていたからである。

「ああこれで凶器もわかった」

とはいえ、そういう喜びも、ほんの一瞬間のものであった。