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ぎもんのきんかい

疑問の金塊

海野 十三

「キング」1934(昭和9)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,600 字 · 32 页

青空文庫

この形勢では尾行者たちに勝利が行ってしまいそうだ。残るは、これからすこし行ったところに、さらに暗い海岸通があるが、その辺の闇を利用して、なんとか脱走することである。

そんなことを考え考え前進してゆくうちに、向うに町角が見えた。私は大きな息を下腹一ぱいに吸いこむと、脱走は今であるとばかり、クルリと町角を曲った。そして一目散に駈け出そうとする鼻先へ、不意に人が現れた。

「オイ政、待った!」

その声には聞き覚えがあった。これはいかんと引き返そうとすると、後からまた一人が追い縋った。私はとうとう挟み打ちになってしまった。

(しまった!)

と思ったが、もう遅い。

「政! 妙なところで逢うなア」

二人は予て顔馴染の警視庁強力犯係の刑事で、折井氏と山城氏とだった。いや、顔馴染というよりも、もっと蒼蠅い仲だったと云った方がいい。

「……」

私はチェリーを一本抜いて、口に銜えた。

「話がある。ちょっと顔を貸して呉れ」

「話? 話ってなんです」

「イヤ、手間は取らさん」

刑事は猫なで声を出して云った。

「旦那方」私は真面目に云った。「銀座の金塊は、私がやったのじゃありませんぜ」

「ナニ……君だと云やしないよ」