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ぎもんのきんかい

疑問の金塊

海野 十三

「キング」1934(昭和9)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,600 字 · 32 页

青空文庫

逃げるなら今のうちだった。しかし私は別に逃げようとはしなかった。

刑事たちは、折角探し求めていた横浜ギャングの一人、赤ブイの仙太が、遂に無惨な死体となって発見されたので、只もう残念でたまらないという風に見えた。二人は諦めかねたものか、なおも屍体をいじくりまわしていた。

「おやア、なんか掌の中に握っているぞ」

と、突然に、折井刑事が叫んだ。

「ナニ、握っているって? よし、開けてみろ」

山城刑事は懐中電灯をパッと差しつけた。屍体の右手は、蕾のように固く、指を折り曲げていた。折井刑事はウンウン云いながら、それを小指の方から、一本一本外していった。

「うん、取れた。……あッ、これは……」

「なんだ、金じゃないか!」

掌の中からは一枚のピカピカ光る貨幣が出てきた。

「金だ。オヤこれは金貨だ! それも外国の金貨だ」

金貨が出てきて、刑事達は俄かに緊張した。銀座の金塊盗難事件以来というものは、黄金を探して歩いた二人だ。その黄金製品である金貨が、屍体となった赤ブイ仙太の掌中から発見されたということは、極めて深い意味があるように思われたのだった。それにしても、それが外国金貨とは何ごとだ。