轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
びょうちゅうき
病中記
寺田 寅彦
1920(大正9)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,795 字 · 8 页
助手の浅利君は部屋に居なかった、出勤している事は帽子掛の帽子と外套でわかっているが朝から顔を見なかった。平日でも自分の室の前はめったに人の通らないところである。呼鈴を押しに立つ事は到底出来ないから浅利君が帰るまで待っている外にはどうする事も出来ないのであった。ガランとした室の天井を見るのが心細かった。ふるえる手で当もなく手掛りのない扉の面を撫で廻しながら動物のような唸り声をつづけていた。何分くらいこの状態が続いたか分らないが自分には恐ろしく長いものに思われた。そのうちに軽い足音が廊下に聞えて浅利君が這入って来たので急いで呼びかけた。入口から自分の寝ているところは見えないから返事はしたが自分がどこに居るかわからなかったようであった。二声三声呼んでいるうちに自分の倒れているのを見付けて急いでやって来た。驚いて寄って来た。机の上に胃活の鑵があるから取ってくれと頼んだらすぐに取って来て呑ませようとした。しかし水がなくては呑めないからどうか水を一杯くれと云った。浅利君はすぐに小使室へ茶碗を取りに行った。それを待っているうちに急に嘔気が込み上げて来たので右向きに頭を傾けて吐いた。