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ちじんのふくしゅう

痴人の復讐

小酒井 不木

「新青年」1925(大正14)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,482 字 · 13 页

青空文庫

というのは、彼女の残された健眼も、ことによると緑内障に冒されるかも知れぬと期待して居たからであります。

果して、私の期待したことが起りました。患者は手術後、程なく無事に麻酔から覚めて、元気を恢復し、その日は別に変ったことはなかったですが、翌日から左眼に痛みを覚えると言い出したのであります。剔出した右の眼のあとが痛むのは当然ですが、左の眼の痛むのは緑内障が起りかけたのだろうと考えて、私は心の中で、うれしそうに、チャンスだ、チャンスだと叫びました。

然し、S教諭に対する復讐は? 諸君、若し、左の眼も緑内障にかゝったならば、もう一度眼球剔出の手術があるべき筈です、私は其処に希望をつなぎました。何事もチャンスですよ、諸君!

愈よ三日目になって繃帯を取ることになりました。私はその日をどんなに待ったことか、繃帯を取り除いて若し残った眼が見えないようだったら、それこそ立派な緑内障の証拠で、患者に対する復讐心が一層満足させられるばかりでなく、教諭に対する復讐のチャンスも得られる訳ですもの。

その朝、私はS教諭に向って、患者の健眼が痛み出した旨を告げました。すると、教諭は顔を曇らせて、