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ちじんのふくしゅう
痴人の復讐
小酒井 不木
「新青年」1925(大正14)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,482 字 · 13 页
私は顫える身体を無理に押えつけて、じっと辛抱しながら、S教諭に対して復讐するのは、この時だと思いました。美貌を誇り、それを売り物として居る女優が一眼をくり抜かれることは彼女にとっては死よりもつらいにちがいない。若し、私の点眼したアトロピンが直接の原因となったとしたならば、私は立派な復讐を遂げたことになる。と、こう考えて見ても私はどうもそれだけでは満足出来なかったのです。彼女に対してもっと/\深刻な復讐を遂げ、その上教諭に対しても思う存分復讐したいと思いました。それにはこの又とないチャンスを利用するに限ると私は考えたのであります。
患者が眼球剔出ときいて如何にそれに反対したかは諸君の想像に任せます。然し、S教諭は捨てて置けば両眼を失うということ、巧みに義眼を嵌めれば、普通の眼と殆ど見分けがつかぬことなどを懇々説諭して、なおその言葉を証拠立てるために、義眼を入れた患者を数人、患者の前に連れて来て示したので、やっと患者は納得するに至りました。
女子の眼球剔出の手術は、通常全身麻酔で行うことになって居ります。私は即ち、その麻酔を利用して、S教諭に対する復讐を遂げようと決心しました。