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やせがまんのせつ
瘠我慢の説
木村 芥舟
05 福沢先生を憶う
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,313 字 · 11 页
老僕聞て大に驚き、過る三月三日、桜田の一条を語りければ、一船ここに至りて皆はじめて愕然たり。
予が新銭座の宅と先生の塾とは咫尺にして、先生毎日のごとく出入せられ何事も打明け談ずるうち、毎に幕政の敗頽を嘆じける。間もなく先生は幕府外国方翻訳御用出役を命ぜらる。或日、先生、役所よりの帰途、予が家に立寄り、今日俸給を受取りたりとて、一歩銀廿五両包二個を手拭にくるみて提げ来られ、予が妻に示し、今日貰て来ました、勇気はこれに在りとて大笑せられたり。
また或時、市中より何か買物をなして帰り掛け、鉛筆を借り少時計算せらるると思ううち、アヽ面倒だ面倒だとて鉛筆を抛ち去らる。
或日、老僕、先生の家に至りしに、二三の来客ありて、座敷の真中に摺鉢に鰯のぬたを盛り、側らに貧乏徳利二ツ三ツありたりとて、大にその真率に驚き、帰りて家人に告げたることあり。
先生は白皙長身、一見して皆その偉人たるを知る。されば先生は常に袴をも着せず、一書生の風体なるにかかわらず、予が家の婢僕等皆尊敬して、呼ぶに先生を以てし、門番、先生を見れば俄かに衣を纒いてその裸体を蔽いて礼を為せり。
先生の親友に高橋順益という医師あり。