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はっくつしたびじょ

発掘した美女

坂口 安吾

「講談倶楽部 第五巻第四号」1953(昭和28)年11月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,882 字 · 29 页

青空文庫

「抱きしめて。手を放しちゃダメ。目がまわる。自分で支えられないわ」

「もう大丈夫だから、シッカリして下さい」

「ええ、でも、そう、にわかに元に戻らないわ」

「ジッと目をつぶッてらッしゃい」

「ええ。耳鳴りがしてるのよ」

初音サンは梅玉堂の手首を汗がにじむほど握りしめていたのである。意識が戻ってきた。後から抱きしめている梅玉堂の体温がしみわたる。云いようもない快感だった。そこでわざと一二分、まだ意識モーローたるフリをした。可愛いい罪悪感。そして、梅玉堂がいとしいような、なんとなく仇めいた気持になった。

「もう、いいわ。放してちょうだい」

「ほんとに、大丈夫ですか」

「ありがと。もう、いいのよ」

初音サンはスタスタと吊橋を渡った。対岸へついても梅玉堂の足音がきこえないから振向いてみると、梅玉堂は吊橋の真ン中へんに尻モチついている。

「どうかしたんですか」

「下駄が片ッ方見えなくなりましてねえ。先祖代々履き古してきた家宝の下駄らしいから探してるんですが……」

「探さなくッたッて分るじゃありませんか。たった一枚の板の上ですもの。そこになければ谷底へ落ッこッたのよ」

「どうも、そうらしいですな」