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はっくつしたびじょ

発掘した美女

坂口 安吾

「講談倶楽部 第五巻第四号」1953(昭和28)年11月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,882 字 · 29 页

青空文庫

初音サンが手を放して落ちる。するとそのマキゾイで、下の自分も当然突き落されて、二人はからみ合って谷底へ落ちる。それもまた大自然だ。いま滝壺にからみ合い抱きあっていた若い男女と同じようなものだ。一方は生の歓喜にあふれ、一方はそのままオダブツであるにしても、大自然たるに変りはない。初音サンが墜落すれば我また喜んで落ちようものをと、梅玉堂は落ち行く空間で一瞬からみ合うはかなき肉体の接触を空想して、それを最後の、しかし無上のものと考えたほどである。息も絶え絶えに、幻想を見ながら登ったのである。

ついに登りつめた。初音サンは背のびして、三度四度深呼吸すると、人心地が戻ってきたが、振向いてみると、梅玉堂は登りつめたところで四ツ這いになってノビている。さすがに思いを寄せる麗人の前であることに思い至ったものか、歯をくいしばって上体を起して、アグラをかいて笑ってみせたが、全然泣き顔であった。

「あなた、そんなにお疲れになったの」

「この巨体、この、二十三貫五百……」

息も絶え絶えである。お握りジイサンから一パイ水をもらって、ようやく人心地がついた。

そこにホラ穴があった。