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とざんだんぎ

登山談義

木暮 理太郎

「山」1935(昭和10)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,219 字 · 16 页

青空文庫

私は曾て白馬岳の頂上に立って、あの美しい草原が縦横に蹈み蹂られた惨めな有様を見て、哀愁の感が起るのを禁じ得なかったのであります。私どもは祖先が開いて呉れた登山を新しい形式で続け、更に之を子孫に伝えなければならない、それには余り汚れたものを伝えたくないのは人情でありましょう。

斯様な環境の中に育った私の登山ですから、形式方法とも其殻を脱することを得なかったのは当然で、服装といえば和服に脚絆草鞋、着茣蓙を纏い、油紙を用意し、荷物を振分けの両掛にして、檜笠の代りに蝙蝠傘を携えていました。藤木さんは之を評されて、武者修行そっくりと言われましたが、昔の旅仕度ですから似た所もあります。流石に短刀や仕込杖などは、講中の例に傚って携帯しませんが、幸に何等の異変もなく明治の末年まで登山を続けて、初めて都会の文化式登山の人達と接触したので、山に登る人などはあるまいと思っていたのに、意外に多くの山好きがあることを知って驚きました。その人達が日本山岳会の発起人並びに初期の会員の幾人かであります。

此服装で最も困ったのは山で暴風雨に遭った時で、傘などはさせないから茣蓙と一緒に丸めて腰にさし、油紙をしっかりと体に纏い付けて風雨を凌ぐ、これより外に方法がありません。