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しろいくま

白いくま

小川 未明

「良友」1926(大正15)年10~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,512 字 · 9 页

青空文庫

それだのに、これんばかりしか、氷をここへは持ってこない。こんなけちんぼうで、そのうえ、力の弱いくせに、よくあんなに強い棒を造ったものだ。いや、あのときは俺がどうかしていたのだろう。この力で、あんな細いものがへし折れないはずはないのだ……。」

白いくまは、ふいに、そんなことが頭に浮かぶと、どっと暴風のように、鉄の格子に飛びついて破ろうとしました。しかし、やっぱりだめでした。

けれど、このすばらしい勢いで、見物人がみんなびっくりして、声をたてました。くまはそれをせめても痛快がったのであります。

そんなようなことも、このくまが、ここにきたはじめのうちのことでした。しまいには、このおりの中にも、人間にも馴れてしまいました。人間は思ったよりはやさしかったからです。

この国の人々は、寒い、寒い、北の国にすんでいる白いくまをひじょうに珍しがりました。いったこともない、想っても、ほとんど想像されない北極に近い世界を考えることは、なんとなく神秘的であり、また、うっとりとさせられるからでした。

「くまや、おまえは、そんな遠い、寒い国で生まれたのかい。親もあり、兄弟もあったのだろう。