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しろいかべ
白い壁
本庄 陸男
在线阅读本庄 陸男《白い壁(しろいかべ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,697 字 · 51 页
雨が夜明けからどしゃ降りであることは知っていたが、その時刻が来ると同時に、子供は嫌な仕事をさっさと投げだした。朝っぱらからむり強いされるコルク削りの内職手伝いは、いい加減に子供の心をくさくささせた。そして富次は学校に行きたいと一図に考えるのであった。べつに勉強がしたいなどという殊勝な心ではなかった、ただこの陰気くさい長屋よりも、曠々とした学校が百層倍も居心地よかったのだ。年じゅう寝ている病気の父親と、コルク削りで死にもの狂いになっている母親の喧嘩には、たまらないと思う漠然とした気持で――しかし母親の剣幕が一番おそろしく、富次は紐のちぎれた鞄を小脇にしっかり押え、こんな場合しかたなしに父親を視た。床の上に長くなっている父親は、いつか学校で見た磔されるキリストみたいなひげ面で、眼ばかり異様に蒼光からせていた。富次はぎょろりと動いたその眼にあわてて視線を壁に移した。するとそこには、医薬に頼れない病人が神仏に頼るならわしどおりに、不動明王の絵が貼りつけてあった。
「学校なんて行ったって――」と母親の言葉がきゅうにやさしくなった。「なあ富次、損しることはあっても一銭だって貰えるんじゃねえからよ、それよかお母あの仕事を手伝うもんだ、な、そしたらこんだ浅草へ連れてくからよ」