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しろいかげ
白い影
小川 未明
「婦人公論」1923(大正12)年1月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,097 字 · 13 页
そして、運転手は、このごろ、神経衰弱にかかっていたということもつけくわえて報道しました。
すると、ここに、白い着物を着た大男が、その後も真昼ごろ、のそりのそりと線路の上を歩いているのを見たというものがありました。なんでも、その人の話によると、雲をつくばかりの大男であったというのでした。
こうした奇怪な話は、これまでに、二度めであります。この鉄道線路は、西南から走って、この野原の中でひとうねりして、それからまっすぐに北方へと無限に連なっているのでした。
この前この地方に、稀有な暴風が襲ったことがあります。そのときは、電信柱をかたっぱしから吹き倒してしまいました。高い木は折れ、家は倒れ、橋は流れてしまったので、じつに、天地は真っ暗になったのであります。人々は、そのときの恐ろしかったことをいまでも記憶しています。やはり、その当座、一つのうわさがたちました。
なんでも、暴風は、黒い太い棒になってうずを巻いて過ぎていった。あの暴風がくる前、灰色の着物を着た、見上げるばかりの大男が、この鉄道線路の上をのそりのそりと歩いていたのを、見たものがあったというのであります。