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しろいかげ

白い影

小川 未明

「婦人公論」1923(大正12)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,097 字 · 13 页

青空文庫

なぜ、警笛を鳴らさなかったか? 被害者の側では、こういって、鉄道側を非難いたしました。

白い影は、鉄道線路を伝って、ついに街の方へやってきました。こんどは、街のあちらこちらで、白い影のうわさが盛んになりました。

「今日、向かいのご隠居が、取引所で、白い男がみんなの中に混じって見物していたといわれました。それで、昼過ぎからの株がたいへんに下がって、大騒ぎだったそうですよ。」と、あるところでは、おかみさんが近所の人に話をしていました。

「白い男ってなんでございますか?」

「白い着物を着た、気味の悪い男だそうですよ。」と、おかみさんは答えました。

そこへ、ちょうど隠居が通りかかりました。二人の女は、おじいさんを呼び止めました。

「おじいさん、あんたは、白い男をごらんなさったのですか。」と、一人の女はたずねました。

「めっそうな、私が見たら、いまごろは破産せんけりゃならん。白い、気味の悪い目つきをした男が見物人の中に混じって、じっとしていたということでな。なんでもその男を見たものは、みんな株に損をしたという話じゃ。」と、おじいさんはいいました。

ある日、街の四つ角のところで、電車と自動車とが衝突しました。