轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しろいかや
白い蚊帳
宮本 百合子
「中央公論」1927(昭和2)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,800 字 · 18 页
彼女にとってこの路は始めてではなかった。数年前、今は別れた夫とこの道を何度も通った。崖の洞に祀ってある何かの小さい社に見覚えがあった。
橋を一つ渡ると、道は左手に川を眺めて進んだ。ところどころ、大きな地崩れでやっと一人歩ける小道が、右手の石垣よりに遺されている。やはりごろた石の垣だ。歩きながら、なほ子はひとりでに二三度、その石垣の上の家の方へ視線を向けた。彼女が五日ばかりいた小林区の役宅と云うのは、確かにその辺に在ったに違いないのに、どこにもそれらしい家のかげは見えなかった。ただ、どれが新しいとも分らない同じような破屋がその辺一帯に建てこみ、一軒の理髪店が、赤と藍との塗り分け棒を軒先に突き出している。当時の記憶は、なほ子にとって快いものではなかった。然し、そう数年のうちに全然忘れ切れる種類のものでもなかった。それに反してあたりの様子の変りようの激しさが、なほ子に意外な、ぼんやり驚きの感情さえ与えた。見れば、川も、幅が半分ばかりになっている。
詮吉は、呑気にステッキを振り振り、
「荒れてるなあ、物凄いようだ」
と、都会人らしく感歎した。
「そりゃ湯ケ原のようには行かなくてよ」