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しろいみち
白い道
徳永 直
「新潮」1948(昭和23)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,169 字 · 36 页
「ね、青井さん」
三吉があわてて電灯の灯の方へ顔をむけると、気のいい人の要慎なさで、白粉の匂いと一緒に顔をくっつけながら、
「あなたは、それでいいんですか?」
といった。三吉はくらい方をむいたままうなずいた。すっかり夜になって、草すだれなどつるしたどの家も、食事どきの、ゆたかなしずかさにあふれてるようだった。
「まあ、尻を落ちつけるさ――」
深水が、これも人はいい、のみこみ屋の単純さで、
「――こないだ、きみのおっかさんに逢ったときも、心配してござらっしゃった。三吉が東京へゆくと申しますが、あれに出てゆかれたらあとが困りますなんてなぁ、きみも長男だからね」
などという。
「――熊連だってこまるよ。小野も津田もいなくなるし、五高の連中だって、もうすぐ卒業していってしもうしなァ。きみのような有能な人物が、熊本にとどまって、ぜひガンばってくれんことにゃ――」
けっきょく三吉は、新婚の二人に夕めしもくわせず、夜ふけまで縁さきにこしかけていた。
二
家のひさし下に、ひよけのむしろをたらして、三吉は竹のひしゃくをつくっている。縄でしばった南京袋の前だれをあてて、直径五寸もある大きな孟宗竹の根を両足の親指でふんまえて、桶屋がつかうせんという、左右に把手のついた刃物でけずっていた。