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しろいみち

白い道

徳永 直

「新潮」1948(昭和23)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,169 字 · 36 页

青空文庫

やがて時計台の下で電気ベルが鳴りだすと、とたんにどの建物からも職工たちがはじけでてくる。守衛はまだ門をひらかないのに、内がわはたちまち人々であふれてきた。三吉はいそいで橋をわたり、それからふたたび鉄の門へむかって歩きだす。――きょうはどのへんで逢うだろうか――。

鉄の門をおしやぶるようにして、人々は三つの流れをつくっている。二つは門前の道路を左右へ、いま一つは橋をわたって、まっすぐにこっちへ流れてくる。娘、婆さん、煙草色の作業服のままの猫背のおやじ。あっぱっぱのはだけた胸に弁当箱をおしつけて肩をゆすりながらくる内儀さん。つれにおくれまいとして背なかにむすんだ兵児帯のはしをふりながらかけ足で歩く、板裏草履の小娘。「ぱっぱ女学生」と土地でいわれている彼女たちは、小刻みに前のめりにおそろしく早く歩く。どっちかの肩を前におしだすようにして、工場の門からつきとばされたいきおいで、三吉の左右をすりぬけてゆく。汗のにおい、葉煙草のにおい。さまざまな語尾のみじかいしゃべりやわらいごえ。「バカだよ、お前さんは」「いたいッ」「何がさ?」「……ちゃんによろしく云っといてねッ」