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しろいみち
白い道
徳永 直
「新潮」1948(昭和23)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,169 字 · 36 页
「そうだな、青井」
くらい町を、高島をかこんで、古藤の下宿にもどりながら、学生たちのうしろから歩いてゆくと、ときどき、古藤がふりかえって、三吉に同意をもとめるためにふりかえる。こっちの情勢を高島に報告するのであるが、三吉は三吉で、もう今夜の演説会で、「新人会熊本支部」もおしまいだ、などと考えているのだった。
「だから、労働者グループは、いまじゃ青井君一人ぽっちですよ」
下宿の二階にあがると、古藤にかわって福原が説明している。浅川も、
「印刷工組合は、小野が上京してから、かえってアナの影響がつよくなったようだナ」
などというのを、古藤たちとおなじ年頃の高島はふりむきもせず、年長者のように、あぐらのひざに肘でささえた顔で、「フム」と、三吉の方だけみつめている。夕方福岡からきて、明日は鹿児島へゆき、数日後はまた熊本へもどって、古藤たちの学校で講演するというこの男は、無口で、ひどく傲岸にみえた。あつい唇をむッと結んでいて、三吉はゴツンとぶつかるようなものを感じさせる。そのうち、学生たちがまだ彼の演説の内容について、ボルの革命論についてはてしなくいい争っているのに、気がつくと、高島は両手で膝をだいたまま、小さいカバンを枕にして、室のすみに犬ころのように眠っている。