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しろいみち
白い道
徳永 直
「新潮」1948(昭和23)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,169 字 · 36 页
高坂はやはり印刷工組合の幹部で、自分で印刷工場も経営している。一方では憲政会熊本支部にもひそかに出入している男であるが、小野、津田、三吉の労働幹部のトリオがしっかりしているうちは、まだいうことをきいていた。
「きみィ、応援するのやろ?」
三吉が黙っていると、
「ええわしの方も、ひとつたのむゾ」
と、長野は酔ったふりでいった。長野も高坂も「女郎派」といわれていた。そして、この名前をつけたアナーキストの小野は、この春に上京してしまっていた。
「どうだ、あがらんか」
深水はだいぶ調子づいていた。
「おい、そっちに餉台をだしな」
嫁さんはなんでもうれしそうに、部屋のなかへ支度しはじめた。
「いや、わしはかえる。ホラ、あれでな」
長野がながいあごをしゃくってみせると、深水は気がついたふうに、こんどは三吉にだけいった。
「じゃ、きみあがれ」
「いや、おれもかえるんだ」
三吉はそういったが、長野が垣ねから上被をとって肩にひっかけ、
「なんだ女一匹、しっかりしろや」
と三吉の肩をたたいてから、上機嫌ででてゆくのをみおくりながら、やはりたちそびれていた。
「ときに、あの娘いくつだい?」