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はくとうのうた

白塔の歌

豊島 与志雄

――近代伝説――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,450 字 · 43 页

青空文庫

ホテルの食堂などにも彼女はよく出かけましたし、ダンスも相当以上に巧みであることが、ボーイ達には知られていました。然し上流の社会にとっては、彼女はただ中流婦人に過ぎませんでしたし、少しく清潔でないそして少しくうるさい有閑婦人に過ぎませんでした。

そういう陳慧君のもとで、柳秋雲は少女時代を過し、学校に通い、それから化粧法や料理法も覚えましたし、特に歌曲をも教わりました。また、陳慧君のところにはいろいろな来客が多く、秋雲はいろいろな談話を聞きました。そして十七歳になった時、彼女は十ヶ月ばかり荘家で暮すことになりました。

陳慧君はその店の奥に秘蔵してる書画のことで、また方福山を通じて、荘家とも誼みを結んでおりました。そして或る時彼女は、荘夫人の前に、恰も懺悔でもするような謙虚な調子で、自分の頼りない身の上を歎き、これまでの軽薄な行動を悲しみまして、次に柳秋雲のことを持ち出し、由緒ある家柄の憐れな孤児だが、彼女を立派に育てるのが衷心の願いであるといって、荘家の淳良な家風のなかで暫く彼女を教養して頂きたいと頼みました。それから彼女は声を低めて、ひそやかにいいました。