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はくとうのうた

白塔の歌

豊島 与志雄

――近代伝説――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,450 字 · 43 页

青空文庫

「そうしますと、私の夢も、お笑いになる権利はありませんわ。」

「どんな夢……。」

「駱駝に乗って、長城の上を歩いてゆきました。」

「おかしい夢だな。」

「ところが、ふと気がついてみて、とても淋しくなりましたの。拳銃を持っていませんでした。私、あの冷りと光ってる、小さな拳銃が一つ、ほんとにほしかったのです。」

「それで、どうするつもりだったの。」

「どうもしませんわ。ただ持っておればよろしいんですの。歌をうたう時計や、枝から枝へ飛び移る金の鳥が、西太后の玩具だったとしますれば、新時代の女性の玩具は、拳銃であってもよろしいでしょう。」

「新時代の女性の玩具か、それは素敵だ。」

「では、その玩具を下さいますか。」

荘一清は振向いて、彼女の顔を見ました。彼女の言葉の調子に、あまりにも静かな重みが籠っていましたし、その顔には沈鬱な色が浮んでいました。

それまで黙って聞いていた汪紹生が、突然いいました。

「一体それは、夢の話ですか、本当の話ですか。」

「自分でも分りませんわ。」

そして彼女は、汪紹生の眼の中へじっと視線を向けました。

「私は家へ帰りますと、全く違った生活のなかにはいります。