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はくとうのうた

白塔の歌

豊島 与志雄

――近代伝説――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,450 字 · 43 页

青空文庫

勿論こうした噂は、ある一部の人々の間にひそかに囁かれただけでありまして、事の真偽は定かでありませんけれども、それが原因でか、或は他に何かあったのか、一般市民の間に不安動揺の空気が次第に濃くなりつつありました。

そういうわけで、方福山の招宴は、人々に一種の印象を与えました。

招待を受けた荘太玄は、その子の一清にいいました。

「私は身体不和ということにして、お断りしようと思う。方さんからは時折、南方各地の銘茶の御厚志にあずかっているが、近頃、あの人の行動には私の心に添わないものがあるようだ。けれども、お前は行ったがよかろう。青年にとっては、いろいろなことを見聞するのが精神の養いになるものだ。」

「それでは、私がお父さんの代理をも兼ねて行きましょう。」と一清は気軽に答えました。

「いや、お前個人として行くので、代理を兼ねるというわけにはいくまい。」と太玄は考え深そうな眼付をしていいました。

ところで、荘一清にとっては、父のことよりも寧ろ、友人の汪紹生の方が問題でありました。

荘太玄は今では、あまり世間のことに関係したがらず、家居しがちでありましたが、その見識徳望の高さを以て巍然として聳えてる観がありました。