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はくじつむ

白日夢

豊島 与志雄

「新小説」1923(大正12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,672 字 · 23 页

青空文庫

いた。建築師の一分一厘違わない繩墨で、図面を引かれ拵え上げられた、全く同じな二軒だった。二軒ではあるが、一本の背骨がつきぬけてる、くっついたまま動きの取れぬ長屋だった。

「二軒とも全く同じだね。」

家にはいって私は妻へそう云った。

「そりゃその筈ですよ、同じ形に建てたんでしょうから。」

なるほど、この上もなくはっきりした理屈だが、それにしても変だった。妻の話によれば隣家も私と同じような会社員で、私よりは三つ四つ年上らしく、やはり細君と女中とがあり、子供が二人あった。私だって、もう三四年もしたら、それくらいの年配になり、子供もも一人くらいはふえるだろう。そして両方とも、同じくらいの貧乏さらしい。同じような日々を送り、同じように年老いてゆき、同じ程度の苦や楽を嘗め、同じくらいの小金でも残して、同じように死んでゆくことだろう。そして今現に、朝や晩、私の方で茶の間に集って、つましい食事をしている時分には、隣家でも恐らくそうしてることだろう。両方の生活全体が、同じくらいの日の光を受けて、同じくらいの明るさに輝いてることだろう……。

そんなことを考えながら、私は朝夕出勤の出帰りには、有村道夫とある隣家の表札を、可笑しな気持で眺めずにはいられなかった。