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しらふじ
白藤
豊島 与志雄
――近代説話――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,822 字 · 16 页
ゆるい傾斜地の工合や、すぐ近くのコンクリート塀などが、場所をはっきり指示してくれました。
それにも拘らず、保治は暫く立ち止りました。
焼け枯れた木立は、ごく短い切株を残して、すっかり伐り採られていました。瓦礫やトタン板が散らばっていました。大小さまざまな石が、何に使われていたものとも分らず、意外にたくさん転がっていました。そして一面に赤茶けた焦土でした。その全体の面積が、如何に小さかったことでしょう。細川の家と隣家とまた隣家と……それらが其処に建ち並んでいたとは、到底思えないほどでした。それだけの人家が消滅して、後にその僅かな地面しか残さなかったということは、眼の錯覚というばかりでなく、一種の驚異でありました。それでも其処にはっきりと、細川の家のコンクリートの土台の一部が、瓦礫のなかに狭小な地域を描き出していました。
やがて、保治はその狭小な地域に踏みこみました。庭だったと思える片隅に八手が三四株、地面低くこんもりと葉の茂みを拵えていました。その横手、寒山竹の藪跡らしいところに、ひょろりと伸びた幾筋かの蔓があって、ちぢれた小さな葉を出しかけていました。