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しろへびのし
白蛇の死
海野 十三
「新青年」博文館、1929(昭和4)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,881 字 · 24 页
パイロット・ランプが青から赤に変色して、ぱたりとベルが鳴止む。その儘技手は配電盤の前に突っ立って、がっしりした体を真直ぐに、見えぬ何物かを追っているようであった。もう四十年輩の技術には熟練しきった様な男である。――一分、二分。春の夜は闌けて、甘く悩しく睡っていた。
「土岐さん! 土岐さん、一寸……」
不意に裏口へつづく狭い扉が少し開いて、その間から若い男の顔がヒョクリと現われた。ひどく蒼白い顔をして、明らかに何事か狼狽しながら四辺を憚っていた。
「おう」くるりと振返った技手は、
「国ちゃんか、なんだい?」と、何気なく配電盤を離れた。
「あの、一寸来てくれませんか、何うも可笑しいんです。お由が仆れちゃって」
青年は一途に救いを求めるような、混乱した表情を見せなから、乾からびた言葉をぐっと呑みこんだ。
「お由――」
「ええ、仆れちゃったきり、どうしても起きないんです。困ってしまってね」
土岐健助は濃い眉を寄せてチラリと窓の方を眺めた。
「弱ったな、相棒は起せないし――」
「ええ?」
「喜多公なんだよ。考えものだからね」
さっと青年の眼は怯えあがった。
「ま、この儘にして置いて一寸行って見よう。