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しろへびのし

白蛇の死

海野 十三

「新青年」博文館、1929(昭和4)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,881 字 · 24 页

青空文庫

その鉄砲風呂の中から、お由の膚理のこまやかな、何時もねっとりと濡れている様な色艶の美しい肌が、工場中の評判になってしまった。

「お由さんの体は、まるで白蛇のようね」

その白蛇の様な肌を、何かの用で工場へ来合せた吉蔵が一目見て、四十男の恋の激しさ、お由に附纏う多くの若い男を見事撃退して、間も無く妾とも女房とも附かぬものにしてしまったのである。

こうしてお由は娘から忽ち姐御へと変り、あられもない「白蛇のお由」と自分から名乗って伝法を見習うようになったが、若いに似ずよく親分の世話をして、執念深く窺いよる男共は手痛い目にあわされるという評判が専らであった。

然し魔は何処に潜んでいるか計り知れぬ。それ程気の強いお由が、この正月頃から臆病な大学生山名国太郎にすっかり魂を打ち込んでしまったのだから――。二人の甘い秘密は、幸い今日まで親分にも知れず、数々の歓楽を忍ばせて来たが、ここにもやっぱり悪魔は笑っていたのだ。若しお由の死から国太郎との秘密が知れたが最後、深い中年者の恋の遺恨で、どんな惨忍な復讐が加えられることであろう。

生きた心地も無いこの哀れな青年を前にして、技手は全く途方にくれたようであったが、一方空っぽにして来た変電所の事も気になるらしく、咄嵯に何うにか、後始末の手段を考えてくれた。