轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しろが
白蛾
豊島 与志雄
――近代説話――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,700 字 · 22 页
その視線が、へんに鋭く、彼の胸を刺しました。
彼は眉をひそめました。彼女がその良人のためか子供のためかまたは誰か身内の者のために、弁当を拵えることは、甚だあり得ることだったのです。それを、彼女が全く独り暮しだと、どうして彼は初めからきめてしまっていたのでしょう。お千代さんとの連想からだったのでしょうか。彼は眉をひそめて、そして、手にさげてる荷物の重みの力をもかりて、突っこんでみました。
「実は、あなたの住所は存じていますが……。あの、小泉美津枝さんというのは……。」
ゆっくりした調子で彼が言いきれないうちに、彼女は立ち止ってしまいました。
「美津枝はわたくしです。わたくしは美津枝です。」
不思議そうに彼女は彼を見つめました。その、持ちあがって細まる左の眼は、少しく斜視で、それを中心に、顔全体にさっと冷酷とも言える色が流れました。とたんに、彼女は丁寧なお辞儀をしました。
「申訳ございません。有難うございました。」
彼女は野菜の袋を受け取ろうとしました。
彼はそれを拒みました。
「どうなすったのです。何かお気に障ったら許して下さい。お宅の近くまでお伴しましょう。