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はっけっきゅう

白血球

豊島 与志雄

「良婦の友」1921(大正10)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,538 字 · 24 页

青空文庫

安心すると、可笑しくなった。

「おい、皆で来てごらん、大入道が居るから。」

晋作の声の調子に元気づいて、皆は座敷から出て来た。大きな影が幾つも重なって、眼の前の障子に映った。

「やあ、大入道が沢山居らあ!」と晋吉が叫んだ。

「お前のは小入道じゃないか。」

そして皆は、まだ先刻の驚きから醒めずにいる清を除いて、障子に影を映し合った。けれど、それが次には不気味になって、立ちつくしたまま黙り込んだ。

晋作は障子をさっと開いた。向うの高窓が、死人の眼のようにぼーっと浮出していた。ぞっと薄ら寒い気がした。

「あら、どうしてこの室の電気だけつかないんでしょう?」

秋子の言葉に皆初めて気付いた。晋作は中にはいって電燈の捻子を捻ねった。ぱっと明るくなった。が皆は云い合したように、そのまま座敷へ戻った。

「馬鹿げた入道だね!」

晋作は強いて笑おうとした。その笑いが変に硬ばってくる所へ、清は別なことを主張しだした。

「でも初めは、たしかに電気がついておりましたが……。」

女中部屋の電気は、いつもつけっ放しにしておかれたのだった。その晩も停電の前までは、たしかについていた筈だった。