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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
こうしておいて、美留藻はグタリとなった紅矢を、又もや「瞬」の上に抱え乗せて、再び都へ一散に駈け上りましたが、今度は王城の西の大銀杏の樹を目標に、青眼先生の門の前に来まして、紅矢を馬の上から突き落し、自分はキャッと叫びながら馬から飛び降りると、そのまま素早くどこかへ逃げて行ってしまいました。
あとに残された名馬の「瞬」は畜生の事ですから何事も知っていよう筈がありませぬ。けれども今自分の背中から落っこちたものを見ますと、自分の主人の紅矢ですから、畜生ながら気にかかると見えまして、しきりに紅矢の身体を嗅ぎながら、ぐるぐる歩きまわっていましたが、やがて首を擡げて高く悲し気に嘶きました。
最前から青眼先生の家へは、紅矢の家から引っ切りなしに使いが来て、紅矢はまだ来ぬかまだ来ぬかと尋ねていました。そのお使いから詳しい様子を聞いて、青眼先生はどうしたことであろうと立っても居てもおられず心配をしているところへ、不意に表の門の前で馬の嘶き声が聞こえましたから、もしやと思って駈け出して見ますと、こは如何に、紅矢は銀杏の樹の根元に血まぶれになって倒れていて、傍には「瞬」