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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

その薬は一寸でも身体にかかると、直ぐに身体中の血が氷になってしまうという恐ろしい毒薬でした。けれどもその夜は何事も無くて済みました。その次の夜も次の夜も無事に明けました。いよいよ明日は宮中でお目見得の式があるという晩になると、その間家中は濃紅姫の身支度で大変な騒ぎで御座いましたが、すっかり支度が済みますと、姫はこの家の一番の奥の石の神様を祭ってある大広間の真中に、寝台を置いてその上に寝かされて、その周囲には四人の家来が代り番に寝ずの番をしておりました。これは姫の身体に万一の事が無い用心です。

両親はこの様子を見て安心をして自分の室に引き取りました。美紅姫もその枕元に来て――

「お姉様、お寝み遊ばしまし」

と云って、あとを見返り見返り出て行きましたが、その顔は云うに云われぬ悲しさに満ち満ちていました。これを見ると濃紅姫は――

「ああ、美紅姫と一所にこの家で眠るのもこれがおしまいになるかもしれぬ。美紅はそれで泣いているのであろう。何という悲しい事であろう」

と思いながら美事な香木で作った格天井を見ていましたが、熱い熱い涙が自ずと眼の中に溢れて、左右にわかれて流れ落ちました。