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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

ああ。ああ。俺は気違いになりそうだ」

その声は次第に高まってしどろもどろに乱れて来ました。とうとう立っていられなくなって、両手を顔に当てたまま床の上に泣き倒れましたが、間もなくよろよろと立ち上って、

「石神に祈ろう。石神に祈ろう。濃紅姫の無事を祈ろう」

と云いながら室をよろめき出て行きました。

あとに残った青眼先生は、矢張り二ツの死骸を見つめたまま立っていました。けれども紅木大臣がこの室を出ると間もなく、有り合う椅子にドッカと腰を下して、腕を組み眼を閉じてじっと考え込みました。そうしてさも悲しそうに独り言を云いました。――

「噫。やっとわかった。悪魔の逃げ途がやっとわかった。悪魔はあの銀杏の樹から逃げ出したのだ。この間の夢は正夢であった。美紅姫はたしかにあの夢を見たに違いない。そして王様も御覧になったに違いない。

そうだ。王様は美紅姫と一所に悪魔に魅入られておいでになるのだ。否。事に依るとあとの四つの悪魔が……王様の御姿を盗んで……」

青眼先生はここまで云って来ますと、忽ちブルブルと身ぶるいをして屹と王宮の方を眺めました。その顔は見る見る青褪めて、眉を釣り上げ唇を噛み締めました。