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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

姫は嬉しさの余り紅矢に獅噛み付いて――

「あッ。お兄様。お父さまやお母様やそれからあの美紅はどこに居ますか」

と聞きました。すると紅矢はニコニコ笑いながら――

「妹は兄さんのお使いで今一寸他所へ行っている。それから御両親は今遠い処へお出でになっているが、そこを知っているのはあの『瞬』だけだ。丁度今『瞬』は門の前の馬車に繋いであるから、あれに乗って行ったら会えるだろう」

と申しました。姫は直ぐにその気になりまして、急いで門の前に引き返して見ますと、兄様の言葉の通り、「瞬」が馬車を引っぱって、そこにちゃんと待っていましたから、直ぐに飛び乗って手綱を取り上げて、鞭を高く鳴らしました。

馬車は野を越え川を渡って、山を乗り越し谷を飛び渡りながら、北の方へ流星のように走りましたが、やがて涯しもなく広い砂原へ来ますと、轍が砂の中へ沈んで一歩も進まなくなりましたから、今度は馬車を乗り棄てて徒歩で行きました。やがて四方には何も見えず、只砂の山と雲の峰ばかり見える処に出ましたが、そこには山のように大きな石で出来た男が寝ていまして、濃紅姫を見るとむっくりと起き上って、見かけに似合わぬ細い優しい声で――