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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

貴女はこれから真直に北の方へ、どこまでも歩いてお出でなさい。そうすれば決定そこで貴女の御両親にお会いなさるでしょう。左様なら。御機嫌よう。可愛い、可愛い濃紅姫」

と云うかと思うと、そのまま又もやゴロリと仰向けに引っくり返って眠ってしまいました。

姫はこの石男に別れてから、その教えの通りに猶ずんずんと北に向って進んで行きますと、やがて日が暮れ初めた頃、向うに火に柱を吹き出している岩山と、その火の柱の光りに輝やいている一つの湖が見えて来ました。その火の柱の美しい事。まるで千も万もの花火を一時に連けて打ち上げるようで、紅や青や黄色やその他種々の火花が散り乱れて、大空に舞い昇っていましたが、不思議な事にはその轟々と鳴る音をじっと聞いていますと、お父様の声のように思われるではありませぬか。濃紅姫は嬉しくて堪らず、足の疲れも忘れてなおも進んで行きますと、やがて今度はどこからとなく懐かしいお母様の声が聞こえて来ました。姫は思わずその声の方に誘われて、その方へ迷って行きますと、やがて湖の岸まで来ましたが、その声はどうも湖の真中あたりから聞こえて来るようです。

姫は直ぐにザブザブと湖の中に這入って行きましたが、水は次第に深くなって、膝から腰へ腰から胸へと届いて来ました。