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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
「美しい……お方」
「馬鹿者……それはわかっている。どんなお姿だ」
「紫の髪毛を垂らして」
「エエッ」
「銀の剣と……コ、金剛石の……」
「何ッ」
「オ……男の着物を召して……」
「悪魔だッ……」
と叫びながら紅木大臣は、騎兵を突き飛ばして奥へ駈け込みました。そうして何事と驚く家の者には一言も云わず、剣を腰に吊るして外套を着て帽子を冠るが早いか、廏へ行って馬を引き出して鞍も置かずに飛び乗りますと、イキナリ馬の横腹を破れる程蹴付けました。
馬は驚いて狂気のようになって、一足飛びに飛び出しましたが、いつ迄も往来に出ずに同じ処ばかりぐるぐるまわっていますから、紅木大臣は自烈度がって――
「エエ。何をしているのだッ」
と叫びましたが、見ると馬はいつの間にか、紅木大臣の屋敷の中にある、大きな丸い馬場の中に駈け込んで、死に物狂いに駆けまわっています。紅木大臣は歯噛みをして――
「エエッ。この畜生ッ。表門へ出るのだッ」
と罵りながら、馬をキリキリ引きまわして、花園も芝生も一飛びに、表門に飛び出しましたが、その時はもう最前の騎兵は疾くに王宮に帰り着いている頃でした。
紅木大臣は王宮の表門を這入ると、一直線に玄関まで乗り付けて、馬からヒラリと飛び降りましたが、帽子はいつの間にか吹き飛んで了っていました。