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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

ました。青眼先生は妾の思い通り、あの夢の中で、妾を悪魔だといって殺そうとしたお方で御座いましたから、もし見付かったらどうしようと思ったからで御座います。

それからどれ程位の間気絶したままでいましたものか、不図気が付いて見ますと、時分は丁度真夜中で、妾はいつの間にか戸棚の中に突立っています。そうして戸棚の扉の鳥の形をした透し彫りが、丁度眼の前に見えます。

妾は暫くの間は何事かわからずに、ぼんやりと鳥の透し彫りから洩れて来るラムプの光りを見詰めたまま突立っておりました。もしやこれはまだ本当に眼が醒めずに、夢を見ているのではないかと思いました。ですから妾はよく心を落ち付けて、眼をしっかりと見開いて、鳥の透し彫りから覗いて見ました。そうして室の中に灯れている丸硝子の行燈の、薄黄色い光りで向うを見ますと、妾は自分の眼を疑わずにはおられませんでした。妾の寝台の上には、妾の寝巻を着た、妾そっくりの女が、平然妾がする通りに髪毛を寝台の左右に垂らして、スヤスヤと睡っているでは御座いませんか……ハッと驚いて自分の着物を探って見ますと、どうでしょう。妾の着物はいつの間にか、奇妙な男の着物とかわっていたので御座います」